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肘関節(橈骨)人工骨頭が3級にならないことを考える。

障害年金では、3大関節に人工関節又は人工骨頭を置換すると3級に認定する、とされています。しかし、保険者(日本年金機構と厚生労働省)は、肘関節においては該当しない場合がある、としています。

原則として人工関節又は人工骨頭は3級になる

上肢・下肢とも3大関節に人工関節又は人工骨頭を入れた場合には3級に認定されます。その根拠は以下です。
国民年金・厚生年金保険障害認定基準
(上肢)第7節 第1上肢の障害 2認定要領(1)コ
一上肢の3大関節中1関節以上に人工骨頭又は人工関節をそう入置換したものや両上肢の3大関節中1関節以上にそれぞれ人工骨頭又は人工関節をそう入置換したものは3級と認定する。

(下肢)第7節 第2下肢の障害 2認定要領(1)ク
一下肢の3大関節中1関節以上に人工骨頭又は人工関節をそう入置換したものや両下肢の3大関節中1関節以上にそれぞれ人工骨頭又は人工関節をそう入置換したものは3級と認定する。
障害認定基準には、この他にさらに上位等級に認定する(たとえば2級にする)例外の記載はありますが、3級に該当しない場合の記載はありません。この規定は障害認定基準ですから、これ以外に基準はないと考えるのが普通です。
その他、厚生労働省の通知でも同様に人工骨頭・人工関節で一部を3級から除外する旨のものは、私の知る限り存在しません。

肘関節のうち、橈骨への人工骨頭置換は3級にしない取扱い

一昨年、私が受任した事案で、肘関節のうち、橈骨頭に人工骨頭を置換した場合に3級に認定されなかったケースが発生しました。また、同時期に同内容の認定を受けた方からの相談、他の社会保険労務士の受任事案が確認されました。

結果として、このうち2件を私が代理して再審査請求まで行いましたが、いずれも棄却されました。

社会保険審査会裁決の内容

再審査請求においては、請求人側は、障害認定基準には「一関節」とあるだけで詳細な基準がないこと、平成23年12月から平成24年2月に行われた「障害年金の認定(関節の機能等)に関する専門家会合」においても、橈骨頭のみの置換が除外されるべきかについて検討を行っていないこと、同じく厚生労働省が扱っている労災給付においては、橈骨のみの置換を除外せず、人工骨頭置換として労災給付を行っている等の主張をしました。

社会保険審査会は、「肘関節は、腕部を構成する上腕と前腕を構成する2本の橈骨と尺骨の3つの骨頭が組み合わされてできている関節であり、前記認定基準でいう人工骨頭を置換したものとは、肘関節にあっては上腕骨、尺骨及び橈骨全ての骨頭について人工体に置換したものをいうと解するのが相当であるところ、本件の場合は肘関節のうち、橈骨頭のみを人工骨頭に置換されたものであり、認定基準でいう人工骨頭を置換したものに当たらないことは明らか」として請求を棄却しました。

日本年金機構の対応

日本年金機構は、2021年3月19日に「肘関節の人工関節そう入置換の取扱い」というパンフレットを同機構サイトに掲載しました。

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こうした取扱いは障害認定基準の上書きに当たるのではないか

保険者は、再審査請求公開審理において過去にも同様の裁決が既にあるという主張をしました。しかしながら、保険者の挙げた裁決は10年以上も前のもので、その間どのように認定されてきたのか(本件と同様に、すべて不支給としてきたのか、中には支給される方もいたのか)は不透明です。

もちろん医学の進歩は著しく、人工関節についても同様であるというのは加味されるべきです。その趣旨で平成26年には身体障害者手帳の基準が改正されています。しかしながら、本件の最大の問題点は保険者の処分が障害認定基準に規定されていない基準で独自に行われ、その過程に問題があるのではないかということです。

障害認定基準は、原則として、医師などの専門家による専門家会合で医学的な妥当性、社会的要請を踏まえて検討されているもので、議事録も公開されるなど一定の透明性が担保されていますが、本件の保険者の処分には透明性も根拠もありません。このことは公開審理で委員も指摘しており、障害認定基準では橈骨が除外されることを読み取ることができない、肘の人工骨頭置換の場合には、すべての骨頭を置換する必要があるという意味ですか?(後の裁決の趣旨と同様)という指摘をしていました。保険者は「その通りである」と回答しました。

今回の唐突なパンフレット作成は、保険者の処分を既成事実化する目的と勘繰られても仕方のないものです。今後はこのパンフレットを根拠として主張してくることが十分考えられ、また、請求者側を実質的に拘束することになると考えられます。

社会保険審査会裁決及び公開審理の保険者の回答においては「肘関節にあっては上腕骨、尺骨及び橈骨全ての骨頭について人工体に置換したものをいう」としていましたが、本パンフレットでは「肘の屈伸の主体である上腕尺骨関節の人工関節そう入置換が3級に該当します」としています。個々が判断するとこうした違いが起こるため、専門家による会合を開催しているのではないでしょうか。

本件のように、障害認定基準にない基準を保険者が独自に設定し、「パンフレット」によって周知することは障害年金制度に対する信頼を揺るがすことになりかねないと考えます。

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